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第2話
そして、そんなナガを襲うような馬鹿なまねをしない自分がここにいる。
わざわざ見せ付けられなくともわかる。
俺は到底ナガにはかなわない。
俺より強い。
ただその一点のみで、イナスはナガに従っていた。
長いものには巻かれろ、というわけだ。
幼い頃から幾多の修羅場をくぐってきながら身につけた、処世術だった。
ナガは着衣のまま、ベッドの上でこちらに背中を向けていた。
本日のお相手の姿は、その体に隠れてこちらからは見えない。
どうやら咥えさせている最中らしく、ちゅくちゅくと水音だけが静かな寝室に響いていた。
「例の件、遂行しました」
それだけ伝えた。
イナスの報告に、ナガは後ろを向いたまま軽くうなずいた。
仕事は終わりだ。
そそくさと寝室を後にしようとしたイナスを、ナガが意外にも引きとめてきた。
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