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第6話

 長い回廊を歩きながら、イナスはリーンのことを思った。  大丈夫か、あいつ。  正直、ナガがリーンに手を出す可能性を全く感じていなかったわけではなかった。  美しい彼が魔闘士に就任した時から、文官、武官はもとより歩兵にいたるまでその体を求めて恥も外聞もなく舞い上がった。  甘い言葉で、贈り物で彼の気を引こうとやっきになり、そしてそれらが全て無駄だと悟った時から無理強いに走った。  文官、武官はその権力でひれ伏させ、歩兵は暴力で組み敷いた。  歩兵に数人がかりで陵辱されているリーンを、何度か見たことがある。  そんな目に遭うのは本人の力不足から来ること、と見て見ぬふりを続けた。  そして、あの時も一言も声をあげてはいなかった。 「嘘でいいから、おとなしく啼いときゃいいのによ」  ぼそり、とつぶやいた。  そうしていれば、ナガは満足なのだから。  わざわざ怒りを買うようなまねをしてどうなる。  そして、リーンがそのうち激昂したナガに殺されるのでは、と思ってぞっとした。  さらに、ぞっとした自分に、ぞっとした。

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