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第7話

 リーンがどうなろうと、知ったこっちゃねえ。  イナスと同じ魔闘士・リーン。  この世のものとは思えぬほど美しいその姿を、イナスはこれまでできるだけ見ないようにしてきた。  必要以上に、その心に触れないようにしてきた。  いったん気になりだすと、きっと溺れる。  そんな危うい予感を、本能的に感じていたから。 『お前の好きそうな玩具なんだが』  ナガの言葉が思い出された。  好き? 俺が? リーンを?  馬鹿馬鹿しい、とイナスは鼻で笑った。  あいつは俺より強くない。  多彩な技で、魔術をもって人をあやまたず仕留めることができる、との噂は聞き及んでいたが、それを見たことはないのだ。  その強さなど、怪しいものだ。  あいつはきっと、弱いのだ。

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