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第9話

 詰所の私宅で汚れた甲冑を脱ぎ、ワインの瓶に口をつけがぶ飲みした。  体が、心が熱く火照っている。  ベッドに行くのも面倒で、ソファの上でうとうとしかけたその時、薄くけぶったオーラを屋外に感じ取った。    リーン。  ナガへのおつとめが済み、自宅へ戻るところか。  ほろ酔いのイナスは、その惨めな姿でも拝んでやるか、と自分にうそぶきノブに手をかけた。  心の奥底の、彼への心配などには気づかぬふりをして、屋外へと出て行った。 「よう」  軽く、声をかけた。  先ほど、哀れな姿を見られているのだ。  どんな反応をするか、楽しみだった。  体を辱められたリーン。  今度は、その心が辱められるのだ。  しかし、そんなイナスの期待を裏切って、リーンは明るい声を返してきた。

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