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幼馴染み
「よう、紫乃。遅かったな。夜更かしでもしたのか?」
テーブルには、既に幼馴染である瑛斗が朝食に口を付けていた。
彼の両親と僕の両親は共働きをしており、親同士仲が良い僕らは、こうしてどちらかの家でご飯を食べることが多かった。
今日は母さんがゆっくりの日、だから朝食の席に先についていた瑛斗は、トースターで焼かれたパンにブルーベリーのジャムを付けながら、からかうように僕を見てきた。
「そんなんじゃないよ。ちょっと夢見が悪かっただけ」
「エロい夢でも見たか?」
「瑛斗じゃあるまいし、違うよ」
「じゃあ、何かやらかして怒らせる夢だ」
「もう、ああ言えばこう言うんだから」
からかう調子を止めない瑛斗に、僕は頬を膨らませた。
そんな僕を見て一度大きくにやりと口を歪ませた後、全然悪びれた様子もなく「悪い悪い」と片手を顔の前に掲げた彼に益々頬を膨らませながらも、母さんが運んできてくれた朝食に「ありがとう」と言う。
「相変わらず、仲良しね」
「……面白がってるだけだよ」
クスクスと笑いながら、母さんは僕と瑛斗の間で視線を彷徨わせる。
瑛斗が僕をからかい、そしてそれに僕がいつも頬を膨らませるというのはもう僕らの間でパターン化されていた。
それは傍から見れば仲良く映るらしく、実際常に行動を共にしている僕らは相当仲良しに見えるのだろう、学校でもワンセットで見られることが多かった。
「瑛斗くん。今日も紫乃の事、よろしくね」
「任せてください」
母さんの言葉に瑛斗が胸を張り、それを見て朗らかに笑う母さんは再び台所に戻る。
瑛斗にジャムを取ってもらった僕は、それをパンにつけながら齧りついた。
今日はいつもより遅く起きたから、気持ち急ぎつつ、瑛斗とお喋りしつつ。
「行ってきます!」
何とかいつもより少し遅いくらいの時間に家を出た僕らは、その声と共に並んで玄関のドアを引いた。
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