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クラス会

「おはよう~」 「おはよう!」  教室のドアを開け挨拶ラッシュを受けつつ、自分の席に向かう。  受験生の自覚が出てきたのか何人かの生徒は机の上で参考書と睨めっこしており、中学一、二年とは違う光景に、何だか寂しさが胸に満ちた。  それを振り払いつつも窓際二番目の席に腰を下ろし、ふうっと一息つく。  するとまるで待っていたというように、僕の前の席に座っている関谷朔くんが、妙にキラキラした目で僕を見てきた。 「なぁこれ。お前は参加するのか?」 「何、それ?」  今日の教科書を机の中に仕舞いつつ、僕は彼から名簿らしきものを受け取る。  上の方には『クラス会 イン 旧校舎!』と書かれており、不穏な言葉に眉を顰めた。 「一学期ももう終わりだろ? これから忙しくなるだろうし、忙しくなる前に一旦クラス会を開こうぜ! ってなったらしくて……それで、ただのクラス会じゃつまんないから、なら肝試しでもするか~って、なったらしいぜ?」  関谷くんも伝え聞いた話なのか、首を傾げながら僕に説明してくれた。  何でただのクラス会じゃなかったら肝試しになるんだろう……なんて疑問を抱きながらも、僕はそっと斜め前の教室のど真ん中の席を伺い見る。  そこにいたのは、快活そうな見た目の少年。  薄茶の髪に、強気な性格を思わせる吊り上がった瞳、意地悪そうに弧を描いた唇。  今日もたくさんの人に囲まれている彼は、クラスのムードメーカーであり中心人物、田口陽。  こんな事を提案するのは、彼以外あり得なかった。 「で、参加する?」  再度尋ねられ、渡された紙の丸の付いている人を順を追って見てみる。  結構な人が参加するらしく、そこには既に半分以上の人数の丸が付いていた。  田口くんの提案、それに肝試しというのにも興味を惹かれたのだろう。  まだまだ増えそうな予感のそれに、たらりと冷や汗が流れる。 「何だ、それ」  どうしたら良いんだろうと悩んでいた僕の横から、ひょいと見つめていた紙を攫う手が伸びてきた。  僕の背もたれに手を置いた彼は、その紙に書かれている文字を目で追った途端表情を歪める。 「肝試し? ……こんな時期に?」  そして呟いた後僕を見て、僕の考えている事が正確に分かったのだろう。  それでも迷った僕とは違い、彼ははっきりと告げてくれた。 「俺と紫乃は不参加で」  そして、その紙を関谷くんに返す。  けれど、僕らの話に小耳を傾けていたのだろう。  音を立てながら席を立った田口くんが、こちら側に歩み寄ってきた。 「何だ、怖いのか?」  嘲わらうように口角を上げ、腕を組む。  クラスの注目が、田口くんがこちらに来たことにより何事かと集まってきた。  冷たい視線で睨み合う中、瑛斗が冷笑を浮かべた。

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