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ペア
「本当に大丈夫か、紫乃」
そして、数日後。
気遣わし気に尋ねる瑛斗に、僕はしっかりと頷いた。
「うん。肝試しって言っても、たったの数時間でしょ? それに回るのもペアでだし、それ以外はクラスメイトの皆もいるし。だから大丈夫だよ」
「ごめんな、巻き込む形になって。何なら、お前は参加しなくても良かったんだぞ」
「誰かが憑りつかれでもした時、対処できるのは僕だけだよ? 本当に大丈夫だから、もう行こ?」
中々心配顔を崩さない瑛斗の腕を引き、立ち止まっていた彼を無理やり進ませる。
一旦家まで帰ってきた僕らは、私服に着替えてまた学校へと向かっていた。
旧校舎は新校舎と少し離れて存在し、警備の人もいない。
ただ門が閉じているのでそこを飛び越えれば簡単に侵入できる、立ち入り禁止なんて名ばかりの場所だった。
「紫乃」
「ありがとう、瑛斗」
門を先に瑛斗が飛び越え、続いて飛び越えようとした僕に瑛斗は手を差し伸ばしてくれた。
その手を借りて地面に降り立ち、皆が集まっている場所を目指す。
「おお、来たか」
中庭らしき場所に一つの懐中電灯を中心にして、クラスのほとんどが既に集まっていた。
僕らの姿を見て、真っ先に田口くんが駆け寄ってくる。
「遅いぞ、お前ら」
「悪いな」
瑛斗を説得していたら、いつの間にか集合時間が過ぎていた。
といっても、十分ほどだけど。
本当に、皆こういうイベントが好きらしい。
最近先生も勉強勉強と口うるさくなってきたから、息抜きで参加している人も多いだろうけれど、まさかクラス全員が参加するとは思わなかった。
「じゃ、最後の二人も来たことだし、くじ引きするぞ~。これから一本取ってくれ」
そう言って、田口くんが容器に入れられた割り箸を差し出す。
その先には数字が書かれており、その数字が同じ人同士でペアを組むらしい。
僕らの前にも「ほら」と持ってきて、緊張しながら僕はそれを引いた。
「何番だった、紫乃」
「八番。瑛斗は?」
「……三番」
「……そっか」
希望の人と一緒になるというのは滅多にない。
分かっていたことだけれど、瑛斗の方が安心できた僕は、バレないように瞳を伏せた。
「何だ、瀧川。十番だったのか? 俺も十番なんだ、よろしくな」
でも気を取り直してペアの人を探そう、と顔を上げた時に、先に引いていたらしい田口くんに彼の番号を見せられた。
にやにやといつもの笑みを浮かべているのを見て、瑛斗が悔しそうに唇を噛む。
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