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肝試し

「そろそろね。行きましょうか」 「ああ、そうだな」  番号の早い彼らは二人目が行ったのを見送り歩き出す。  けれどその前に、瑛斗が僕を心配そうな視線で見つめてきた。 「もう、大丈夫だから。早く行って」 「何かあったら、大声出せよ。すぐに行くから」 「分かったから」  そんな僕らのやり取りを見て、黄木さんが呆れたように「全く、過保護なんだから」と零していたような気がするが、それを瑛斗も僕も無視して、僕は二人を見送った。  瑛斗が過保護なのには理由があった。  皆から度が過ぎると度々言われることが多い瑛斗の過保護は、必要なものだった。  それが分かっているから僕も何も言わず、彼にいつも甘えている。  けれど、いつまでも甘えているわけにもいかない。  そう分かっていても中々、状況を打破することができなかった。 「行こうぜ、瀧川」 「うん」  僕らの番がやってきて、田口くんが横に並ぶ。 「そういえば、瀧川は怖いんだったよな。何なら、手でも繋いでやろうか」 「いいよ、平気だから。早く行こ?」  男同士で手を繋ぐなんてとんでもない、そう思いながら、僕は田口くんを促し進んだ。  この肝試しのルールは簡単で、二階の奥にある教室の教卓に行き、そこに置いてあるミサンガを取って帰ってくるというものらしい。  何でも、女子全員で『受験頑張ろう!』という思いを込めて作っていたらしく、こんな渡し方でいいのかと思ったが、『面白いからいい』というのが女子の意向らしい。  面白い事が大好きな人たちが集まったクラスらしい反応である。 「ここか」  懐中電灯で階段を照らし、そこを上がる。  前の人たちは二階の奥の階段から降りるから鉢合わせにならないし、だからなのか二人の足音しか響かない静謐とした雰囲気は、肝試しと言う言葉も相まって中々に味が出ていた。  そんな中順調に階段を上り切った田口くんを先頭に、僕らは進む。  いつも瑛斗にちょっかいを仕掛ける彼が近くにいることは多いけれど、僕と彼が二人きりになった所で会話はない。  なので、淡々と廊下を進んでいった。  そして真ん中にある階段を通り過ぎた所で、田口くんは残念だというように呟く。 「もうすぐだな。意外にあっけないな、お化け役でもいた方がよかったか?」 「修学旅行とかじゃないんだし、これくらいでちょうどいいんじゃない?」 「それもそうか」  僕の言葉に頷いた田口くんは、「ここだな」と言って教室のドアを開けた。 「あれ? ……悪い、間違えたみたいだ」  けれどまた戻り、首を傾げる。  教室のプレートを見てみるも目指している二―五ではなく、そこは二―二と表記されていた。  そしてまた進み、今度は取っ手を引く前にプレートを確かめる。 「二組だ」  けれど、現れたのはまたもや二―二の文字。  進んでいるのに、歩いているのに、まるで一歩もそこから動いていないような。

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