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第三の選択肢
「零ノ宮、学園?」
「そうだ」
放課後、初めて会った日から毎週金曜日に学校の正門に来るようになった白羽くんを交えて、恒例となりつつあるファミレスでメニューを選んでいる時だった。
ポツリと進学に関する悩みを零したら、「なら、零ノ宮学園はどうだ?」と気軽に言われ、僕は驚きに目をめいいっぱい見開いてしまった。
「それ、日本でもトップの名門私立高校でしょ! そんなの、行けるわけないよ!」
「いや、紫乃なら行けると思うぞ?」
「何の根拠があって言ってるの、僕の成績知らないくせに!」
思わず叫んでしまった。
確かに、僕は瑛斗より成績は良いが、それだけだ。
クラスには僕より頭の良い人なんて何人もいるし、その人たちでも目指すのさえおこがましいほどに難関高校であるそこを、どう考えたら僕が入れると思うのか。
無理に決まっている、そんな思いから声が大きくなってしまった僕を見て、飲み物を取りに行っていた瑛斗が目を丸くした。
「どうした、そんな大きな声出して」
「……だって」
僕が大声を出すことなんて滅多にない、だからそれを指摘され、恥ずかしさに眉根を寄せた。
「白羽くんが、変な事言うから」
「変じゃないだろ? 俺はただ、おすすめの高校を提案しただけだ」
「こんなに取り乱す紫乃も滅多に見ねえぞ? どこだよ、そこ」
「零ノ宮学園」
「ぶっ!?」
コーラに口を付けていた瑛斗が、思い切り口に入っていたものを吹き出す。
ティッシュで口や周りを拭きながらも、白羽くんに呆れ気味に言った。
「いくら紫乃でも、そこは無理だと思うぞ? 冗談で勧めるにしても、たちの悪い所を選んだな」
「冗談じゃないって言ってるだろ。現に、俺の第一志望はそこだしな」
「え!?」
瑛斗と声が重なる。
二人して白羽くんを無遠慮に上から下まで何往復かして、暫く思考が停止した。
先に正気に戻ったのは、瑛斗だった。
「人は……見かけに、よらないんだな」
その言葉通りに、白羽くんはそこまで頭脳明晰だと言い切れるほど頭が良さそうには見えなかった。
物腰柔らかそうに下がる眉根は人当たりの良さを表して、いつも着ている藍色のジャケットと黒のズボンが大人っぽさを体現している。
柔らかな雰囲気は優しさは表しているが、聡明さは示していなかった。
だからつい、驚きで瑛斗と二人、ジロジロと見てしまう。
そんな僕らを面白そうに見ていた白羽くんは、メニュー表を閉じそのままブザーを鳴らし頬杖をついた。
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