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条件

「俺もそんなに頭が良いというわけでもないけどな。むしろ、成績は真ん中くらいだ」 「はあ? それで、どう零ノ宮学園を目指すっつうんだよ。今から頑張った所で、あそこは厳しいだろ?」 「勉強なんてしなくていい。俺たちは、生まれつきあそこに入学する権利を有しているんだ」  意味不明な事を言う白羽くんに、僕らは首を傾げ顔を見合わせた。  勉強しないで超難関高校に入学できる、そんな事が果たして可能なのだろうか?  あったとしたら、皆受験に苦しまずにもっと気楽にしているはずだ。  それとももしかして、推薦?  でも真ん中くらいだと自分で言っているくらいなのだから、そこまで成績が良いというわけではないのだろうし……。 「?」 「お待たせいたしました。ご注文を承ります」  どういうことか尋ねようとしたら、タイミングよく店員さんが現れた。  慌てて開こうとした口を閉じ、考えていたメニューを口にする。 「僕はカルボナーラで」 「チーズ入りハンバーグ」 「俺はミートドリアでお願いします」 「はい、カルボナーラと、チーズ入りハンバーグと、ミートドリアですね。ご注文は以上でしょうか」 「はい」 「畏まりました」  伝票に書き込み頭を下げる店員さんを見送り、見えなくなったところで「で?」と瑛斗が白羽くんに鋭い瞳を向けた。  それを受けた白羽くんは、飄々とした態度で「何だ?」と惚ける。 「その権利っていうのは、どこから派生するんだ」  けれどその態度に苛々するよりも、続きの方が気になったらしい。  表情を歪めたもののその苛々は口には出さず、瑛斗は続きを促した。  そしてそれを受け、漸く白羽くんがまともな答えを返す。 「それは、霊が見える事」 「はあ?」 「条件はそれだけだ」  何やら、突拍子もない事を言い出した白羽くん。  穏やかな笑みを浮かべながら、アイスティーの入ったコップに口を付け、ストローをいじくる。  けれど次に顔を上げた時、彼は急に真面目な顔になった。 「ここからは、真剣な話だ、紫乃」  どうやら、今までは僕らの反応を楽しんでいただけらしい。  居住まいを正した白羽くんは、僕を真っ直ぐと見つめてくる。 「お前は今まで、俺以外に霊を見ることができる人間に会ったことがあるか?」 「白羽くん、以外に?」  これから何の話をされるのか分からなくて、身構えた僕は彼の言葉を復唱する。 「そうだ」  頷いた白羽くんに、逡巡の末僕は頷いた。

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