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霊媒師の家系

「一人だけ……」 「そいつは、一般人か? それとも、霊媒師か?」 「霊媒師、って言ってた」  霊を見ることができる人間など、日常の中で出会う事など滅多にない。  そんな中出会った、稀有な存在。  数年前に一度だけ会ったその人は、自身を霊媒師だと名乗った。  今でもその時に貰った名刺は引き出しの奥深くに大事に仕舞ってある、そしてその人は『困ったときは遠慮なく連絡しなさい』と言ってくれていた。  その人と出会った時を思い出し、ふふふと密かに僕は微笑む。  単純に、嬉しかったんだ。  僕だけが異常ではないのだと証明されたようで、霊が見えるということが変ではないのだと許容されたようで。  白羽くんと出会った時も嬉しかったけど、やはり一番目は特別だ。  一度だけであっても、僕はあの人を忘れたことがなかった。 「なら、その人から聞かなかったか? 幽霊科の存在を」 「幽霊、科……?」  白羽くんから漏れた言葉に首を傾げる。  初めて聞くワードだった。  そもそも、その人は僕を助けて名刺を渡し、忙しそうに去っていったのだ。共にいたのは一時間にも満たなかっただろう。  そんな短い中で、まともな会話などできるはずもなく。  当然、『幽霊科』なんて言葉も聞いたことがなかった。 「その人と会ったのは、一度きりだから……」 「そうか」  白羽くんが頷き僅かに会話が途切れたその隙を狙ったように、料理が運ばれてくる。  手を上げ指し示し、最後に瑛斗の注文したチーズ入りハンバーグが運ばれ箸を出したところで、再び白羽くんが説明し始めた。 「世の中には、霊媒師の家系というものがあるんだ。大きく四つに分かれたそれは、赤城家、蒼海家、黒見家、そして白羽家。霊媒師は、大体はこのどれかに所属しているんだよ」 「白羽家……それって、白羽くんの家?」 「そうだ」  白羽くんは、どうやら大きな家の出身だったようだ。  霊媒師の一族……それが実際にどう凄いのかなんて想像できない、けれど異様な存在感が生まれたような気がして……目をパチパチと瞬かせると、苦笑された。 「実際には、霊を見ることができて霊に関する仕事を一任している人たち、っていうだけだ。自分の能力を生かす他の人たちと変わらない。ただそれが、一族で共通しているって、それだけだ」  カチカチとそれぞれスプーンやフォークが皿にぶつかる音を立てながら、非日常的な話を淡々とする。  一族で霊媒師をしているということは、霊を見る事が当たり前の環境で白羽くんは育ってきたということだ。  それだけでも僕の今までの状況と違っていて……少しだけ、羨ましく思った。

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