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霊力

「そしてその四家が作ったのが、幽霊科という将来の霊媒師育成のための養成機関。そしてその一つが、私立零ノ宮学園幽霊科、またの名を特別学科。入学条件はただ一つ、霊が見える事、それだけで入学できる場所だ」 「……でも僕、霊媒師になる気なんて……」 「別に、霊媒師にならなくてもいい。ただ紫乃には、霊力の操作方法を学んでもらいたいんだ」 「操作?」 「ああ。紫乃の霊力は普通の霊媒師の比じゃない。このままじゃ周りに被害が出る、いや、現に今、被害が出始めている」  その言葉に、ハッとなって白羽くんを見た。  僕の考えている事が分かったのだろう。頷いた彼を見て、僕の顔は青ざめる。 「肝試しの行われた旧校舎。あそこに、霊が集まってきているんだ」  スプーンを置いた彼を見て、思わずフォークを落としそうになった。  おかしいとは思っていたんだ。  僕は滅多に一人で行動しない、けれど一人になったとしても、あんなにすぐに悪霊に囲まれることなどなかった。  肝試しという霊をおびき寄せそうな雰囲気と場所からあんな事になってしまったのかと思っていたが、どうやら違うらしい。  霊が言っていた『噂』という台詞。  僕の何らかが霊の間で噂となり、それに興味を抱いた霊があの旧校舎に集まってきている。  そして白羽くんが被害と言っている事から、それは生きている人にも害を与えるものになりつつあるということで……。 「……何で、そんな事に」  何が原因なのだろう、僕が何をしたというのだろう。  白羽くんが言っていた『霊力』がキーワードだとすぐに分かりそうなものなのに、動揺していた僕はただ、白羽くんから漏れ出る言葉を待っていた。 「紫乃……お前の霊力はずっと、封印状態にあった。だが、歳と共に霊力も増え、段々と抑えきれなくなってきたんだろう。その霊力が外に出て、それが霊をおびき寄せているんだ」  最後の一口を口に入れた白羽くんは、手を合わせて「ご馳走様」と口にする。  そして口を拭き、「ちょっと出ようか。急いで」とまだ皿に多く残っている僕を急かした。 「頼城、ちょっといいか」 「ああ……何だ?」  ファミレスを出て近くにあった公園に移動すると、白羽くんは僕ではなく瑛斗に話しかけた。  それを不審に思いながらも瑛斗は白羽くんの隣に行き、ベンチの前、既に茜色をし始めている空の下で、白羽くんは自身の手を掲げた。 「わあ」  そして数瞬の後、彼に灯った光を見て僕は感嘆の音を上げた。  どういう原理なのか、藍色の光が彼の手の数ミリ上に灯る。  それは温もりがあるような、それでいて儚いような。  不思議な気持ちにさせる光だった。

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