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紫乃の力
「紫乃の目には、何か映っているのか?」
「え……瑛斗には、見えないの?」
「ああ」
首を傾げながら頷いた瑛斗を見て、僕は残念に思った。
この綺麗な光を共有できないだなんて……今まさに「綺麗だね!」と言おうと思っていたから、余計に眉が下がってしまう。
それを見て申し訳なく思ったのか、「悪いな」と肩を叩いてくれたから、「ううん」って僕も笑って返した。
「これは、何?」
僕には見えて、瑛斗には見えないもの。
それは、霊関係以外ありえなかった。
そして先ほどまでしていた会話から、これはもしかして……?
「霊力だ」
その言葉を聞いて、やはりと僕は頷いた。
目に見える形として見たことはないけれど、あの肝試しの日、霊力を分けてもらった時の白羽くんの瞳に、それは似ている気がした。
今も藍色になっている白羽くんの瞳は、やはり綺麗で。
――ずっと見ていたくなる。
だなんて。
その考えを振り切るために、僕は一旦頭を振った。
そして白羽くんを見ると、彼は徐に僕の肩に手を伸ばし、「ちょっと触るな」という確認を取ってから優しく僕の肩に触れてきた。
と同時に、何やら周りが凪いだように僅かな風を感じ、そしてオーロラのような強弱をもって、紫色の光が満ち始める。
「……わぁ!」
幻想的な光景。
その光は白羽くんの手に集約し、凝縮され、先程の光よりも濃い光となって、彼の手に落ち着いた。
「何だ……これ」
けれど先程と違うのは、瑛斗の反応だった。
藍色の光は見えないようだったのに、今度はまるで僕らと同じものを視界に映しているように、白羽くんの手を見つめて、目を瞬かせる。
「見えるの?」
「……ああ」
どうやら、瑛斗も自身の視界に映しているものが実際にそこにあるのか半信半疑のようだった。
目を丸くしたまま白羽くんに視線を移し、どういうことかと説明を求める。
「さっきのは俺の、普通の人の霊力。そしてこれが、紫乃の周りに垂れ流しにされている霊力を凝集させたものだ」
「え……ってことは、これは僕の霊力……なの?」
「そうだ。霊力は、個人によって色が違うんだ。俺の色は藍色、そして紫乃は紫色って風にな」
未だに光り続ける白羽くんの手にある光を見て、僕は感慨深くなった。
これが、僕の霊力……。
僕がじっと見ていたのに気づき、白羽くんが僕に手を差し出した。
白羽くんの手を両手で囲み、触れるギリギリのところで止める。
それは触れる事もなく温度も持っていないはずだけれど、色のせいなのか温かな印象を受けた。
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