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あの日の言葉
「霊は霊力を吸うことでこの世に留まっている。だから、紫乃のこの垂れ流しになっている霊力を求めて集まっているんだろう。現に、霊が見えないはずの頼城に見える程濃い霊力が漏れてるんだ、放っておくわけにはいかない。その為にも、まずはこの制御を暫く俺と一緒にしようか」
「え……でも僕、テスト勉強が……」
「ああ。だからテストの後、夏休みにもちょこちょこ会おう」
にこりと瞳を細める白羽くんを見て、紅潮しそうになる頬を隠すようにすぐに視線を逸らした。
夏休みも、白羽くんに会える……。
白羽くんが会いに来ないと会えないこの状況で、その言葉は胸に響いた。
あれからひと月が経ち、白羽くんと会うのもこれで六回目。
だというのに、僕の頭の中では幾度となくあの日の白羽くんの言葉が思い出されていた。
――俺はお前が好きだよ。
ふいに浮かぶその言葉に、何度も頬を赤らめる。
でもその度に、高鳴った鼓動を押しとどめた。
(白羽くんの言葉を、信じちゃいけない。それはきっと、僕に言った台詞じゃない、今の僕を見て言った台詞じゃない。だから、信じちゃダメだ)
そう心に言い聞かせて深呼吸をして、囲んでいた手を下ろす。
そして白羽くんも光を散らして、僕の頭に手を乗せようとした。
「それ以上は、ダメだ」
けれど彼の手が僕の頭に触れる前に、瑛斗が白羽くんの腕を掴む。
「全く、油断も隙も無い。お前は紫乃に触っちゃダメだって言っただろ」
「頼城は触るのにか? そんなの、理不尽じゃないか」
「俺はいいの、幼馴染なんだから。でもお前はダメ。紫乃の事好きなんだろ? そんな奴に、大切な幼馴染を触らせる訳ないだろ」
「幼馴染……ね」
意味深に瑛斗を見るも、白羽くんは掲げた手を下ろした。
僕は結局、白羽くんとの間にあの日何があったのか瑛斗に吐かされてしまっていた。
だからあの告白も知っていて、白羽くんに対して瑛斗は警戒を強めていた。
それでもわざわざ隣町から電車で来た白羽くんを無下に追い返すことは出来ず、瑛斗も交えて軽食を取った後解散、というのがいつもの流れになっていた。
二人きりになったことは、あの日以降ない。
でももしもう一度二人きりになろうものなら、甘い雰囲気になってしまいそうで、流されてしまいそうで……だから瑛斗の存在は、正直ありがたかった。
「でも俺も、いつまでも黙ってはいられない」
次の瞬間、下ろした手に油断していた瑛斗をすり抜けて、白羽くんの左手が頬に触れた。
驚いて上を向いた僕の頬に、チュッというリップ音と共にキスが落とされる。
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