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二度目の告白
「へ……え?」
固まった僕は、時間差で何をされたのかジリジリと実感していって、顔に熱が集まった。
慌てて僕らを引き離そうとして動こうとした瑛斗の前に、白羽くんは身を離す。
「好きだよ、紫乃」
そして飛び切りの笑顔と共に、二度目の告白をされた。
僕と彼が会うのは週に一度、数時間とはいえ、僕の事は少しは分かってくれているはず。
白羽くんの知っている僕と、今の僕はきっと違う。
それでも彼は、告白をしてくれた。
僕を知り、告白をしてくれた。
今はそのことで頭が一杯で、それ以上考えられそうもなかった。
「……お前は! 紫乃の半径二メートル以内に入るの禁止!」
「それはさすがに約束できないな」
「俺が許さねえよ! ほら、離れろ!」
ガルルと瑛斗が威嚇し、僕の腕を引っ張って彼の胸元に引き寄せられる。
されるがまま、僕は瑛斗の腕の中に捕まって、それに対して白羽くんは呆れたような視線を向けた。
「そんな嫉妬だけしても、感情が伝わらないと無駄だと思うぞ? 紫乃は相当鈍いからな」
「……そんなの……俺が、よく分かってる」
白羽くんの言葉に、入っていた力を瑛斗は緩めた。
けれど目線の鋭さは保ったまま、白羽くんをスッと見つめる。
「でもてめえにだけは取られたくない。こんな簡単に、紫乃の感情を攫われたくはない」
「何の行動にも移していないお前にだけは言われたくないな」
茜色から落ち始めた空はもう真っ暗で、帰らなければならない時間に近づく。
今日は僕の家で瑛斗も一緒に夕飯を食べることになっていた。
そろそろ動かなければ、母さんが心配して連絡が来るかもしれない。
でも、それを言い出せる雰囲気でもなくて。
僕の事を喋っているはずなのに何のことなのか理由も分からず、ただ睨み合う二人の間を視線を彷徨わせることしかできなかった。
「紫乃が怖がってる。そろそろ帰ろう」
「ああ……そうだな」
やがて目線を外したのは、白羽くんの方だった。
僕の様子を気遣ってくれ申し出てくれた言葉に瑛斗も頷き、ベンチに置いていた鞄を拾う。
僕と瑛斗はリュック、そして白羽くんはワンショルダーリュックをそれぞれ背負い、公園の出入り口に向かった。
「じゃあ、また来週な」
「うん、またね」
白羽くんとはいつもファミレスを出た所で別れていたが、今日は公園を出た所で別れる。
手を振り互いに背中を向け、暫くは無言で歩いていた。
「紫乃」
いつもとは違う瑛斗の様子。
俯き歩いていた彼は急に立ち止まり、僕の名前を呟く。
止まった僕を確認して顔を上げた瑛斗は、僕に追いつくと手を取った。
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