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真斗が知る紫乃
もう、一年になるのだろうか。
あの紫乃を見なくなってから。
赤くなった頬を膨らませながら目線を逸らし、『もう知らないっ』と拗ねる彼を抱きしめて宥めて、そっとキスを落として。
――もう会わない。ごめんね、マサ。
そう言われた時、目の前が真っ暗になったような気がした。
何とか一緒にいようと説得しても最後まで首を縦には振ってくれず、年に一日しかない逢瀬は幕を閉じたのだ。
あの様子じゃもう、本当に会ってはくれないのだろう。
俺への感情は、そんなあっさりと別れを告げられる程軽いものだったのだろうか。
俺が支えると言っても、あの印は紫乃にとってそんなに辛いものだったのだろうか。
そんな真斗の中で湧き上がる疑問は、『ごめん』と言った時に見せた紫乃の表情に霧散した。
辛そうだった、泣きそうだった。
顔を歪めて、今にも涙が零れそうなのを唇を噛みしめて。
自分には言えないことを、彼はまだ隠しているのだ。
その時に確信した。
そしてそれを絶対に、彼は教えてはくれないのだろう。
なら――それを自ら、突き止めるまで。
そう思って真斗は紫乃の事を探していた。
彼が気に悩むことがあるというのなら、それを一緒に解決したい、その一心だった。
紫乃と偶然にも再会して、その『隠し事』はすぐに分かって。
思いもよらない『隠し事』に驚いたけれど、それも最初だけだった。
真斗はそれを、すぐに受け入れた。
紫乃のいない人生なんてありえない。
まだ中学生でありながら、長年蓄積されていくこの想いを今更無下にするなんて、出来るはずもないのだ。
そう。
それが例え、自分の知っている人格ではなかったとしても。
「久々に聞いたな、お前の惚気。最近まで死んだ目をしてたからな。復活したって言って、女子の間で噂になってたぞ」
「何だ、それは。俺は紫乃一筋だと何度言えばわかるんだ。他の人になんて興味ねえよ」
「そうだよな~、はっきりと態度で示してるのに、モテ続けてるのはどういう事なんだろうな? 逆に俺に一人も寄ってこないのはどうしてなんだろうな?」
「それはお前が近寄りがたいからだろ」
分かっているだろうに、と真斗は冷めた目線を晃に向けた。
元々細く吊り上がった瞳に、明るい髪色。誰ともいないときの無表情はヤンキーとしか言えなくて、教室にいないことも多い。
そんなの、まず仲良くなる機会もないのに人柄を知る事などあるはずもなく、晃は外見だけの評価が独り歩きすることが多かった。
よって仲良く喋っているのも真斗だけ、そんな彼に女子が話しかける、ましてや告白をするなんてことあるはずもなく。
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