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紫乃

「白羽くん」  そしてそれから、ちょっと経って。  女の子に見紛う容姿をした男の子が、真斗に近寄った。  ふわふわの髪に、男にしては小さめの身長。  大きな瞳で恥じらいながら真斗を見上げた彼は、嬉しさを隠すように唇を噛んだ。 「紫乃」  そして真斗も紫乃の姿を見て甘い笑みを浮かべ、「お疲れ様」と声掛ける。  はにかみ笑う紫乃はチラリと晃を見て、それから真斗を見た。  無言で『誰?』というメッセージを受け取った真斗は、晃を指さす。 「こいつは、俺の友達。俺らと同じく霊が見えるんだ」 「え、霊が!?」 「ああ」  どうやら紫乃は、真斗以外に同年代の霊能力者に会ったことがないらしく、物珍し気にぱちくりと晃を見やった。  だがそれが失礼だと思ったのか、数秒後にはぶしつけな視線ではなく、笑顔を向ける。 「ぼ、僕は瀧川紫乃、です。こっちは幼馴染の頼城瑛斗。えと、その……よろしく、お願いします」 「おう、よろしくな」  いきなり来た晃に疑問はあるだろうに、紫乃はそれを言葉にすることは無くとりあえず互いに自己紹介を済ませる。  そして晃は真斗の肩に手を回して、耳元で紫乃には聞こえないように「聞いてた通り、可愛いじゃねえの」と囁いた。 「心積もりしてたんじゃないのか? 言ってただろ、紫乃は可愛いって」 「ああ、それは予想通り。だが……お前の言っていた『動揺』の意味も、分かった」  どうやら、真斗の言葉を聞き動揺を隠していたらしい晃は、よく見ると額に汗を滲ませていた。  そして真斗も、一瞬悲しそうに瞳を伏せる。  だがそれは本当に一瞬だけで、すぐに朗らかな笑みを浮かべた。 「じゃあ、いつもの場所に行くか」  真斗の言葉を皮切りに、四人は歩き始めた。 「テスト、どうだった?」 「うん、ちょっと社会が落ちたかなくらい。白羽くんは?」 「俺は全部平均くらいだな」  長く感じられたテスト期間も漸く明け、どんどんテストが返却される時期が訪れていた。  それは紫乃の学校も同様らしく、テスト期間はさすがに紫乃の所に行けなかった真斗は、嬉しそうにこの二週間の紫乃の状況を聞く。  そんな二人の傍らで、げんなりとした顔の晃は正面に座っている瑛斗に話しかけた。 「なあ、この二人っていつもこんな雰囲気?」 「まあ、大体そうだな」 「予想外に甘いな。おい真斗、いくら付き合ってるったって自嘲しろよ。こっちは恋人なんていないんだからな」  いきなり落とされた爆弾に、その場が一気にシンと静まった。  瑛斗と紫乃は驚いたように晃を見て、何が失言だったか分からない晃は、その反応に驚いたままその二人と真斗の間を視線を行ったり来たりさせる。

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