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会いたい

「……聞いていた性格と違う、くらいに思ってたんだけどな……まさか、多重人格とは……」 「悪いな、辛い事を思い出させて」 「いや、いい。どうせ当事者に比べたら、俺は見てるだけしかできないんだ。辛いのはお前の方だろ、真斗」 「いや、俺よりも紫乃の方が辛いはずだ。俺はあいつを支える、そして守る。その覚悟なんて、とうの昔に出来てるんだよ」  そう言って真斗は、「もう戻ろう」と引き返そうとする。  それを止めず、晃も立ち上がり真斗の後を追った。  帰ってきた二人を見ても、紫乃も瑛斗も何も追及したりせず、穏やかな時間が流れていた。  もしかしたら、薄々紫乃は気づいているのかもしれない。  自身について、もう一人の彼について。  だから認めたくなくて、何も聞いてこないのかもしれない。  真斗と紫乃がどう出会ったのか、どこで出会ったのか、聞かれたことは無かった。  普通気になるはずのそれらを、紫乃は一切口にしない。  会いに行ったら話して、告白したら顔を赤らめて。  されることをただ受け入れている、そんな紫乃に、真斗はどうしたら良いのか分からなかった。  目を逸らしている事を認めさせるべきなのか、このまま自然に気づくまで待つべきなのか。 (紫乃……俺は、どうしたらいい?)  あいつなら答えてくれるかもしれない。しょうがないな、と面倒くさそうに言いながらも、適切なアドバイスをくれるかもしれない。  でも今、あいつはいない、頼れない。 (会いたい……ほんの、少しで良いから)  溢れだしそうになった想いに蓋をして、真斗は真っ直ぐと前を向いた。  愛しい人、可愛い人。  愛しているよ、お前の全てを。  そう思いながら真斗は、紫乃に甘い笑みを浮かべた。

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