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向き合おう
「それって……俺が、ばあちゃんちに行く日じゃねえか」
「うん。ごめん、言うタイミング掴めなくて」
二年前、僕を助けてくれた霊媒師、三谷原和宏さん。
連絡を取ると彼はたった一度しか会ったことのない僕の事を覚えてくれていて、そこで『幽霊科』について詳しく話を聞くことにしたのだ。
白羽くんに聞いても良かったのだけれど、実際に霊媒師として働いている、加えて『幽霊科』を卒業した経験のある人から話を聞く方が良いのと、幽霊科に入学する条件である『霊媒師からの推薦状』を、進学するのなら貰えないかと打診するためでもある。
連絡を取った時明後日を出されて了解したのだが、電話を切った後に気が付いた。
その日は瑛斗が付いてこれない。
年に一度、夏休みに行っている母方の祖母の家には、中々揃わない家族が揃う良い機会、つまりは家族水入らずの数少ない日なのだ。
けれど僕がその日に三谷原さんに会いに行くと言ったら瑛斗は僕についてくるだろうし、それは瑛斗の両親や祖母に悪い。
なので直前まで黙っている事にしたのだ。
「白羽と一緒に行くのか?」
「……うん」
僕は一人で行動できない。
そんな僕が頼れるのは瑛斗と、それから白羽くんだけ。
当然行きつく答えに「そうか」とだけ返した瑛斗は、白羽くんを睨みつけた。
「手出したら、許さないからな」
「俺は紫乃に答えを貰ってないからな。返事を聞くまでは、手は出さない」
「お前の行動は信用ならねえんだよ。今までも手やら頬やらにキスしてきただろうが」
「紫乃の返事を聞かない限り、口にもしねえよ」
「ハッ、どうだか」
白羽くんの事を全く信用していないらしき瑛斗は、僕を見て『気を付けろよ』と目線で注意してきた。
それに頷いた僕は、そっと胸に手を置く。
瑛斗がいなくて、白羽くんと二人きりの状況。
ドキドキと鳴り出す胸の鼓動を無視して、僕はゆっくりと息を吐いた。
白羽くんに何か言われる度に、何かされる度に照れるのも、今日で終わりだ。
僕は白羽くんに、聞きたいことがあった。
いつも三人で会う事が多いため二人になる事はあまりない、だからこれは丁度良い機会だと思った。
いい加減向き合おう、聞いてみよう。
――もう一人の、僕について。
「じゃあそろそろ、続きをするか」
「うん」
そんな事を考えているなんて露知らず、白羽くんは立ち上がる。
僕も立ち上がって、それから先程と同様の事をして。
その日はずっとそんな感じで夕方には別れて、次の日は塾に行って受験勉強をして。
それは、すぐに訪れた。
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