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練習場
僕は今まで霊力を制御してきたけれど、もう僕の力だけでは手いっぱいになっている。
あの子も封じられるようにならなければ、大変な事になってしまう。
そしてその為には、『幽霊科』への入学が一番効率良く学べ、そして安全な場所でもあった。
――一つの危機を、乗り越える事が出来るのならば。
「それが最善の方法なんだってことは分かってるよ。でもなら断然、僕は表に出てこない方がいい」
「ダメだよ、それだけは。お前がいないと、俺は……多分、生きていけない」
「マサ……それは勘違いだよ。その執着は罪悪感からできている。あれはマサのせいじゃないんだって、何回言えば分かるの」
「でも……っ」
「来たようだよ、行こう」
その時丁度車が来て、三谷原さんが「ごめんね、遅くなって」と降りてくる。
「あれ、君は……」
そして僕に目を向けると、一瞬目を見開き、けれど次の瞬間、にこやかに僕に手を差しだしてきた。
「初めまして、かな。僕は三谷原和宏、職業は霊媒師だ。よろしくね」
「……よろしくお願いします」
戸惑いながらも僕はそれに応える。
次に三谷原さんは、マサに手を差しだした。
「白羽家の次期当主、白羽真斗くんだよね。噂は聞いているよ、今日はよろしくね」
「よろしくお願いします」
「じゃあ乗って」
そして僕らは、三谷原さんの車に乗り込んだ。
「ここ、は……?」
案内されたのは、平凡な一軒家の階段を下った先にある地下室のような所だった。
何もない辺りが白に包まれたそこで、戸惑いながらもこの場所がどういう所なのかを問う。
「ここは、練習場だよ。僕ら霊媒師は、地域ごとに分かれて配置されているんだ。大体五人ずつくらいで構成されていて、そのグループごとにこういう場所を与えられているんだよ。ここは結界が張られていてね。どんなに強い霊力でも、感知されない。だから安心して、それを解き放ちなさい」
人差し指を向ける先にあるのはきっと、目に見えないもの。
溢れだしそうになっているのを必死に抑え込んでいるのを悟ったのだろう。
そう言われ、安心して僕も徐々に力を抜いていった。
「……ふう」
「もういいのかい?」
「はい、大分楽になりました」
「でも……まだ半分くらいだろう?」
「良く、分かりますね」
「これでも霊媒師の端くれだ。それくらいは、ね」
解放された霊力は、きっと僕ら以外にも目にすることが出来るだろうほど濃くこの空間に浮かんでいた。
紫色の光が辺りを照らし、綺麗な光景に頬が緩む。
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