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封具
「どうしたんだい? 二人とも赤くなって」
「……い、いいえ」
「何でもないです」
「そうかい?」
納得していなさそうな三谷原さんは、不思議そうな顔をしながらも僕に向かって握っていた掌を開いた。
「紫乃くん。これは、霊力を封じる事が出来る封具だよ。強いのはこの二種類しかなかったんだ、ごめんね」
二つを両手で掲げた三谷原さんは、苦笑しながらも僕にそれを手渡した。
きっと霊が散ったことにより呼んでいた応援に『もう大丈夫』だと連絡を入れたり、情報収集を頼んだり、結界の綻びを直したりで大変だったろうに、加えて僕の封具まで探してくれたらしい。
手渡されたのは、アクセサリーを模した封具だった。
一つは二つの黒い紐が対照的に二箇所で留められており、その部分に石がはめられているブレスレット。
そしてもう一つが、透明な雫型のネックレス。
「……マサは」
「ん?」
「マサは、どっちが好き?」
自分じゃ決められなくて、一緒に僕の手を覗きこんでいたマサに尋ねた。
クスリと笑ったマサが指し示したのは、雫型のネックレス。
「貸して、つけるよ」
「ありがとう」
ネックレスをマサに、そしてブレスレットを三谷原さんに渡す。
後ろに回りネックレスを付けてくれたマサは、耳元で「ごめんな」と呟いた。
「封具は、霊媒師しか渡せない。父さんに頼みたかったけど、ここ最近忙しそうにしてたから……」
「いいよ、分かってるから」
カチリと留め具を止めた途端、息苦しさと共に抑え込もうとしていたものが無くなり、気が楽になった。
僕は霊力が多すぎて、僕の霊力を全て封じる封具はこの世のどこにも存在しなかった。
だから僕自身が封じてきたけれど、抑え込めなくなってきている霊力はこうして道具に頼るのも手である。
けれどこれを取った時に暴走する可能性があるから、あの子に霊力の操作法を身に着けてもらう事には変わりないのだけれど。
「色々あって忘れそうになっていたけれど、今日は『幽霊科』に入学すべきか否かの判断に話を聞きに来たんだよね? 結論から言わせてもらうけど、君は絶対に入学すべきだと僕は思うな」
封具をつけマサが後ろから隣に移動した頃を見計らい、三谷原さんが「上へ行こうか」と背中を向けながらそう言った。
一階にあるリビングへ行くと、三谷原さんは台所に立ち紅茶を入れ、僕らの前にカップを差し出す。
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