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感情
「驚いたよ、もちろん。自分の中にもう一人いたんだよ? 当然だよ、そんなの。でも同時に応援したいと思った。白羽くんともう一人の僕は、相思相愛だ。それに僕は、入っちゃいけないんだよ」
「つまり……お前の気持ちは、白羽に傾きかけていたって、そういう事か?」
「……ちょっとは、ね」
実際、自分の中の存在に気付かなければ、僕はそのまま流されて、白羽くんの気持ちが本当に自分に向けられていると思い込んで、受け入れてしまっていただろう。
それくらい、白羽くんの事を好きになりかけていた。
でも、自分の感情が僕には分からないんだ。
彼から流れ込んできた感情だとは思う、けれどほんの少しは、それに流されて自分の気持ちも入ってしまっているのだろう、とも思う。
白羽くんと接する限り、その自分の感情かも分からないものに振り回されるのなんてごめんなんだ、それに彼は本当に、分かっているのだろうか。
体は一つだけれど人格は二つなのだ、それがもう一人の僕にとって、僕への告白は『浮気』と捉えられるのではないだろうか。
それが亀裂となって、僕が原因でこじれる、なんて事になったらたまったものではない。
ここは身を引く方が、二人の為にも良いのである。
「……そうか」
僕の考えを悟ったのだろう。
瑛斗は苦虫を嚙み潰したような顔をして、そのまま僕を引き寄せた。
「泣いていいぞ」
そしてリズム的に背中を叩きながら、額を胸に押し付けられる。
「……なに、それ……子供じゃないんだから、泣く、わけ……」
そう呟きながら、言葉とは裏腹に溢れる感情が、涙となって零れ落ちて。
「辛かったな」
優しく言い聞かせるような瑛斗の言葉に、保っていた心が壊れて、決壊したように子供みたいに声を上げて、僕は泣き喚いた。
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