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第6話

 「何なりとどうぞ」  「....。」  と、言われても実際のところそんなすぐには案は出てこない。  ...一体何をしてもらおうか。  「そういえば、お前さ那智から女とったんだって?」  那智がどうしようかと思案していれば啓吾が唐突に湊にそう問いかけた。  その内容は那智にとって一番触れられたくはない、ナイーブな問題であっただけに考えはそっちのけでそちらの話に耳を傾けてしまう。  「ああ、まぁ。けど、とったっていうかあっちが勝手に俺のとこに来ただけだけど」  「うわ!なんだよその言い方!それじゃあまるで俺がお前に負けたみたいな言いかたじゃん」  「違うのか?」  「はぁー?」  自分は短気ではない方だと思っていた那智だが、目の前の男、湊は自身の急所ばかりをつついてくる。  「お前ムカつく!」  「はいはい、どうどう」  「俺は馬じゃねぇぞ啓吾!」  きつく湊を睨みつける俺に落ち着けと啓吾が諭してくる。  ...動物をなだめるのと同じ方法で。  「まぁまぁ、てかそんな会ってムカつくぐらいならパシリなんてやめればいいじゃん」  「それは嫌だ」  啓吾の言葉を強い口調で言い返す。  せっかくこの男をパシリとして扱き使うことができるのに、あっさり手放すなどそんな勿体無いことは絶対にしない。  すると急に湊はグッと那智の方へ顔を近づけ耳元で囁く。  「児玉は俺が必要なんだもんな」  「なっ、変な言いかたすんな!」  甘い顔でそういう湊から俺は瞬時に後ろへ身を引いた。  そんな光景を優也は無表情のまま見ており啓吾は苦笑いしていて、どうすればいいかわからない様子でこちらを見ていた。  こいつはなんでそういう言い方を皆の前でするかな!  二人に変に思われたらどうするんだよ!  「で、頼み事は決まったのか?」  少し焦っていた俺とは違い相変わらず湊は顔色ひとつ変えずに話しかけてくる。  そして俺は眉間に深い深い皺をつくった。  そんなこんなで始まった湊パシリ生活1日目。

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