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第8話
それから那智は気まずさを少しでも紛らわせようと起き上がり制服を着替え始めた。
冬服である学ランを脱ぎ、次に中に着ているTシャツを脱ぐ。
そして新しく出したTシャツを着る...と、順に着替えていた那智だが
――な、なんだあの視線は...
制服のズボンのベルトをはずし、いざ下ろそうとするが何やら感じる視線が気になってしまって脱ぐことが出来ないでいた。
ちらりと湊の方を見れば、勉強そっちのけで那智を見つめる瞳とバチリとあってしまう。
うぅっ...。
これでは男同士だと言っても気まずくて着替えすらままならないではないか。
「な、何...」
「別に何もないけど」
そうは言うが、依然として湊はこちらを見ることをやめようとはしない。
凄まじいハートの耐久性に最早圧巻させられる。
「俺の着替えなんか見ても、つまらないぞ...」
「いや、つまる」
「つまるって...っ!」
ー いやいや、女ならわかるけど男の着替えなんて見たってつまらないだろ!自分と同じような体をした野郎だぞ?
「何恥ずかしがってんの。女じゃあるまいし」
「っ!別に恥ずかしいわけじゃないし!」
湊の一言に挑発された那智は潔くズボンを下げるとスウェットを穿いた。
そしてキッと睨みつけベッドの上に座る。
そういうところが単純なんだよな、と湊に思われてるとは気がつかない那智である。
「お前、意外に体引き締まってるんだな」
「はぁ?デブだとでも思ってたって言うのかよ」
「違う違う。ただ、制服着てるとすごい細く見えてたからさ。でも脱ぐとちゃんとしてるんだなって」
「まぁ、体鍛えるのも嫌いじゃないから。筋肉ついてるとかっこいいだろ」
腰に手を当ててふんぞり返るが、そんな俺に湊は「そうだよな...」と、視線を下げてぼそりと呟いた。
あぁ、まただ。また暗くなる。
普段超絶にウザいくせに急にしおらしくなるから困るのだ。
2人の間の温度差が那智をモヤモヤとさせる。
「だぁーっ、もう!てかお前はどうなんだよ!自分の体には自信がおありか!」
「さぁな、まぁでもお前よりはいい自信はあるけど」
「なんだと!?じゃあ見せてみろよ。その自信満々の体をよ」
そういうと湊は立ちあがり無言のまま那智の元へと近づいてきた。
そして上の制服を脱ぎ始め、恥ずかしがる素振り一つせず上半身裸になった。
「さぁ、どうですか、児玉さん。俺の体は」
「...う、うっさい!!これぐらい普通だ普通!」
とは、言ったものの実際は結構すごかったりする。
程よくついた筋肉や胸板の厚さが男らしさを感じさせる。悔しいが男の俺でも見惚れてしまうぐらいには...。
だが、素直に認めることができるはずもなく、那智は舌を出して湊をバカにした。
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