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第9話

 「けど、お前そういう割には顔赤いぞ」  「は!?お、お前の目おかしいんじゃないの俺が赤くなるわけないし!」  ニヤリと笑う湊。言い返しはするものの事実なだけに那智は余計に顔を赤くすることしかできなかった。  「つ、冷たいお茶でも持ってきてやるからそれ飲んでそのおかしい頭でも治しやがれ!」  近くにいた湊の横をスルリと抜け、那智は慌ただしく部屋を後にした。  その時に見た湊の顔にはやはり、那智を馬鹿にしたような笑みが浮かんでいて悔しくなる。  「くそくそくそーっ、ほんっと腹立つやつだな」  ブツブツと文句を言いながらもきちんと那智は湊と自分の2人分のコップを出し、お茶を用意した。  そして部屋に戻るときにはきちんと2人分を用意した自分を褒め称えながら戻る。  部屋に戻ると、当たり前だが湊はすでに制服を着ており、何事もなかったかのように俺の課題をやっていた。  「ほらよ。持ってきてやったぞ」  「どーも」  会話はこの二言で終わる。  湊は黙々と課題をやっていて部屋には静寂が訪れる。  自分の分のコップを机に置くとベッドの端へと腰を下ろした。  - そういえばこいつ、勉強はできるのだろうか。女と遊ぶか喧嘩ばっかするような奴だからなんかこの男のまじめな姿がしっくりこないんだよな。  「お前今、課題ちゃんとできてんのか?」  変な答えとか書いてるんじゃ...。頭が良いようには見えないし...。  しかし湊は平然とした態度で「普通にやってるだけだけど」というのみ。  「頭いいのか?」  「児玉よりはいいつもり」  「っ!」 その言葉を聞いた瞬間、那智の中の低い沸点の限界値を越えた。もちろん、その前に自身がそもそも湊に失礼な質問をしている自覚はないが。  「てかお前、俺のことどんだけバカにすれば気が済むんだよ!」  「嫌なの?」  「嫌に決まってんだろ!!俺はMじゃねーから苛々するんだよ!」  「え、Mじゃないの」  「何をどう見たらそう見えるんだよ!俺はオラオラ系で」  「オラオラ系ねぇ」  「あ、いや、オラオラ系まではいかないけど...」  - ...なんか俺こいつにコントロールされてる気がする。  自身の流されやすさに今更気がつく。  もう、なんだか疲れてしまい深い深いため息をついた。

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