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第12話
そんな時、近くにあった携帯が鳴った。
着信音は俺の聴き慣れている曲...ということは、音の発信源は俺の携帯。
そうわかるや否や、那智は素早く携帯をとると通話ボタンを押した。
「はーい、もしもーし」
『ぁ、もしもし...久しぶりだね、那智。さやだよ、』
― なんというすばらしきタイミング!!
まさかのグット?タイミングに一瞬、こいつこの時を狙ったのかと疑ってしまった。
「あー、久しぶりだね。で、何?用事でもあった?」
そして俺は隣にいる湊に向かって口で‘元カノ’と口ぱくで電話の相手を教える。
『あのね、那智...その、直接話したいことがあって...』
「それは、こないだの別れたときのことで?」
『う...うん。それで明日の昼休みに屋上に来てほしいんだけど...』
「いいよ。明日の昼休みね」
『そう。それじゃあそこで明日会おうね』
「用件はそれだけ?」
『う、うん、まぁ。大きな話は...。でさ、あの――』
――ピッ、
相手は何か話してきていたが気にせず那智は通話を切った。
そんな様子を見て、切ってよかったのか?と、湊がさりげなく聞いてきた。
「あぁ、だって用件はもう聞いたし。あのまま話し続けても、きっとくだらないどうでもいいことしか話さないだろうし。」
「ふーん。ま、お前がいいならいいけど。それよか、明日呼び出されたのかよ」
「明日の昼休み屋上にだってさ。お前も暇なら見に来いよ」
チャラチャラと携帯のキーホルダーを弄りながら那智は湊に誘いをかけた。
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