最低なことを言っているのは自覚済み。 　－それでもしょうがないじゃないか。だって悪いのはあいつなんだから。自業自得だ。 　明日は啓吾たちも見に来させて、皆の前でガッツリ振ってやる。 　いつもクラスの中心でヘラヘラニコニコしていた那智であるが、ここにきて自分がどれだけ今回のことで傷つき怒っているのかを自覚することができた。 　だから元カノに同情するつもりなんてこれっぽちもない。癇癪を起こした子供と一緒だとわかりつつも一度火がついた言動は止まらない。 　「お前見た目にそぐわなず、結構酷いことするんだな。意外だったわ」 　そんな那智を湊はやるせない表情をして見ていたが、それも一瞬のことですぐにいつもの人を馬鹿にしたような笑みを顔に浮かべた。 　「．．．はぁ、なんかお前がわからん」 　「わからなくて結構です。」 　フッ、と鼻で笑い湊は視線を下に向けた。そして那智の小さな忍耐がすぐに限界を超える。 　―　あぁ、もう。本当こいつはまさに顔だけだな。周りの女も騙されすぎだ。絶対にこいつは顔がよくなければ性格が最悪だからモテてないに決まってる。 　「おい、児玉思ってることが口から出てる」 　「おっと。あ～、気のせいじゃない？」 　眉を下げ、苦笑いをしている湊。どうやら心の声は口から出てしまっていたようだ。 　「いっとくが、俺は彼女作ったことないぞ」 　「はっ？嘘つくな！！」 　「本当だって。生まれてこの方彼女が出来たことありません。」 　なんとも信じられない話だった。なぜなら、湊は女絡みなどその手の話で有名であったからだ。 　しかし、彼女はいないと言い張る湊．．．ということはもしや　―― 　「セフレかよ．．．」 　「そうだよ。大正解」 　「ありえない！！お前最低！！」 　セフレ．．．。それは那智が一番嫌いな人間関係だった。彼氏がいようといまいと他の奴と体の関係をもったりする、ただの快楽が目当てだけの人間同士の肉体関係．．．その行為が反吐がでそうなほどに嫌いだった。 　那智自身も確かに色んな女と付き合ってきたが誰かと付き合ってる間は絶対に他の女の相手なんかしなかった。それなのに．．． 　「俺、誰かに束縛とか縛られたりするの嫌いなんだよな。それにセフレとかラクでいいし」 　「ないわ．．．。俺そういうことしてる奴大嫌いなんだよな」 　そう言い睨むと、湊はまた一瞬、眉を下げやるせない表情を作った。 　「それよりも課題、あともう少しで終わるわ」 　「あっそ」 　俺は素気ない態度をとり、湊とは一切目を合わせなかった。 　湊は話しながらもさっきからずっと課題には手をつけていたようだった。 　ムカつくけど器用な奴．．． 　それから数分して湊は課題をやり終わり帰っていった。 　 　なんだか胸糞悪い。 　胸の中がもやもやとして気持ちが悪かった。