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第16話

 先程よりもさらに気まずい雰囲気がたちこめる。  - ヤバい。これはもう自分でどうにかしなくてはいけないレベルだ。  なんでこいつに俺が気を使わなければいけないのだ、という思いが頭の中を廻るが、状況が状況なだけになんとかこいつがわかる話題を探す。  「....。ぁ、そういえば、さ。昼休みお前来るだろ?」  ふと、那智は昼休みに元カノと会う約束をしていることを思い出した。  これなら湊もわかる。なんてったって昨日その約束をしたときに那智のすぐそばに湊はいたのだから。  「昼休み...?あぁ、元カノをフルとかどうとかってやつ?」  「そ、そうそう」  「お前が来いっていうなら行くけど」  「なんだよそれ」  冷たい返答が来るだろうかと少し身構えたが、返ってきたものはいつも通りのそれで、那智はどこか安堵した。  「つーか、何人呼ぶつもりなの」  「えーと...お前と、啓吾と優也の3人かな、」  とりあえず仲の良い啓吾と優也は強制的に呼ぶ予定だ。  「行ったとしてもその間見学者はどうしてるんだよ。3人も外野がいたら元カノさん、告るものも告れないんじゃねぇの?」  「あっ、そこら辺は大丈夫。見学者はあそこにいてもらうから」  そういいながら俺はある場所を指差した。 そこは屋上の入り口の上だ。入口の横の壁には一定おきに鉄の足掛けがついており上に登れるようになっている。  上は男3人が横になっても十分な広さがあり、下からじゃ誰がいるかなんてわからない。 ...まぁ、さすがに座ってたり立っていたりすればすぐにバレるが。  「あの上で横になって見ればバレない!」  「あそこねぇ。昼休みか...」  「あ、あのさ!やっぱりお前も来いよ。これ、強制な!」  気乗りしていない湊を見て那智はなぜだかそう言ってしまった。慌てた口調の自分にやや気恥ずかしさが伴われる。  「...お前がそういうなら」  「よし!決まりだな。あー楽しみだなぁ」  「楽しみ...ね」  そういった湊の表情はまた、どこか暗い。  この時、俺はまだなぜ湊がそんな表情をするのか分からなかった。  あの表情だって一瞬のことだったし、本人自体そんな顔をしてるなんて気が付いていない様子だったから 深く追及しようとも思わなかった。  でも、そんな考えが1つ目の間違いだった。

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