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第21話
「で、俺に勉強を教えろ、と。そういうことか?」
「その通り!」
その日の放課後、色々と理由をつけて啓吾を帰らせた那智は真っ先に教室で待たせていた湊の元へと向かい、今日の朝啓吾と話していたことを話した。
こないだ湊にやらせた課題は授業で回答するとなんと全問正解だった。
その事実もあり、悔しいことだが那智は湊に頼ることにした。
「まぁ、別にいいけど」
「うはぁ、よかったー!...あ、じゃあどこで勉強する?」
「俺は別にどこでも」
「えー、それじゃあ...湊の、家は?」
正直一度行ってみたいと思っていた。いい機会だし俺はそう遠慮がちに提案してみることにした。
「俺の家?あー...うん、いいよ」
「じゃ、じゃあ湊の家に決定な!」
湊の言葉に心拍数は上がる。
なぜだか自然とニヤけてしまう口元をなんとか抑える。
そんな那智の苦労を知ることもなく湊は廊下に出て前を歩きだした。
―
――
―――
「おじゃましまーす」
「どうぞ」
那智が玄関に入り一言言うと湊はそれに軽く返答し“部屋はこっち”と言って階段を上っていった。
すぐに那智も湊の背中を追って歩き出す。その間も心臓はドキドキと高鳴っていた。
ここが湊の家...
家の中はきれいで、こまめに掃除をされているようだった。
「俺の部屋はここ」
「...あ、う、うん」
湊は2階にあるいくつかのドアのうちの1つの前に立ち、ガチャリと開け中に入った。
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