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第25話
「あら、琉依...と、そちらはお友達?」
中に入るとどこか品のある声が、そう訊ねてきた。そして「そうだけど」と、てきとうに答える湊が向いている方向を見た瞬間驚いた。
そこには黒髪のスタイル抜群な美人がキッチンにいた。
「うわぁ、すごい美人ママ」
ついつい俺は声に出していってしまった。
あれのどこがばばあだって言うんだ。そんなことは微塵も感じない。寧ろ姉と言われても信じれるレベルの美魔女だ。
...てか、湊の顔は母親似だな。
「やだー!美人ママだなんて!若いイケメン君に言われると嬉しいわ~」
「それよりもケーキあったよな?」
「ん?ケーキならあるわよ~。今食べるの?」
湊の母は那智の言葉に素直に喜び、湊に促されるまま冷蔵庫から白い箱を出してきた。
「私の手作りでよかったらいくらでも食べていってちょうだい」
「え!手作り!?」
白い箱の中には数種類のケーキがたくさん入っていた。
もちろん全部おいしそうだ。
「私、パテシエやってるのよ。だからケーキならたくさんあるの」
「美人な上にパテシエときた...羨ましいっ」
「もう!口達者ね!あなた名前はなんていうの?」
「あ、おれ児玉 那智っていいます!」
「那智君...良い名前ねぇ。これからもたくさん遊びに来てちょうだい!ケーキもたくさん食べていっていいからね!」
湊の母は終始笑顔で話してきた。
...あー、笑い方がすごい湊に似てる。
なんて、話しながらも俺はそんなことを考えてしまっていたのだが。
「てきとうに何個か選んで上行くぞ」
「あ、あぁ、うん」
那智は2~3個特に食べたいと思ったものを選び、皿にのっけると笑顔の湊母に見送られながら2階にある湊の部屋へと戻っていった。
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