28 / 93
第27話
それにしても湊は本当にここで生活しているのだろうか。
見回して思うのだが、あまりこの部屋からは生活感が感じられなかった。
- まぁ、そんなことを俺が気にしたところでどうしようもないが。
エロ本とか、DVD とかなんか男子高生らしいものはないのだろうか。
たとえば、ベットの下とか机の引き出しとかに...
そう、ふと思った那智はまずベットの下を覗き見る。
「うーん...ここには、ないか」
「...何してんの」
するとやっと笑い終わった様子の湊は、俺の行動をみて今度は不思議そうに首を傾けた。
「エロ本とか探してるの」
「...エロ本?そんなの無いけど」
「...は?んなわけねぇだろ。お前、健全な男子高生がエロ本を持っていないなんてありえないから!俺だって持ってるし。あぁ、そうかもしかして恥ずかしがってんのかよ」
「だから本当に持ってねぇよ?嘘じゃないし」
そう言う湊の顔は真顔で嘘をついているような表情には見えない...しかし、
「でもとりあえず確認だけーー」
そして俺は棚の引き出しの扉に指をかけ開けようとした。
「っ!ちょっ、そこは無理!」
そのまま指に力を入れて数センチ引いたところで、焦った湊の声が聞こえた。
それと同時に後ろから骨ばった男らしい手が現れ、引き出しの扉は閉められた。
「っ!み、みな...と?」
――ちょ、やばい...これは非常にヤバいのでは、
那智はその時の体勢に、つい赤面してしまった。
なぜなら四つん這いになった那智に覆いかぶさるようにして、湊がピタリとくっついていたから。
まるでこれじゃあ...っ、
湊の顔は那智の顔のすぐ横にある。
心臓は今まで以上に高鳴り、うるさいぐらいだった。
耳元にある湊の息遣いが聞こえる。湊と重なっている背中から湊の体温が感じる...
那智の頭の中はパニックになっていた。
ともだちにシェアしよう!