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第28話
「引き出しの中は閲覧禁止で」
「...え、あ...っ」
そうして湊はそれだけ言うとすぐに俺から離れた。
ドキドキは依然として鳴りやまない。
...てか、俺は一体何考えてんだよ!相手は湊だし、何よりも男なのに...
ありえないありえない!!きっとここ最近全然女の子と絡んでないから欲求不満になっちゃってるんだ!
だから変に反応して心臓がうるさいんだ!
大丈夫、俺はちゃんと女の子が好きなんだから!
「て、あ...こんな時間だし俺帰るわっ!それじゃ!」
とは思ったものの気不味さは変わらず、すぐさま俺は自分の鞄を持つとそのまま部屋を出た。
玄関でローファーを履いていれば階段を下りてきている湊の姿が視界に入る。那智は一言お邪魔しましたとだけ言うと玄関の扉に手を掛けた。
「また明日も、ここでな」
その時、後ろからそう声を掛けられ何故だか嬉しくなった。
そうして“あぁ”と短く返事をすると赤くなった顔を見られないよう後ろを振り向くことなく俺は湊家を出た。
外を出ると空は暗くなっており、涼しげな風が柔らかく頬に当たった。
「今日の俺...本当どうかしてる」
熱くなった頬は依然冷めることなくほて続けている。
― そういえば、あの引き出しに入ってたのって...
那智は家への夜道を歩きながら、あの時の机の引き出しに入っていたものについて思い出していた。
僅かな隙間でなおかつ一瞬の間だったため、中に何が入っていたかはあまり分からなかったが...多分あれは、
「写真...だよな」
何が写っているかは全然不明だったけど。
まぁ、エロ本は入ってなかったな。
そして俺はこんな身近にエロ本を持っていない男子高生がいたんだな、と感心していた。
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