30 / 93
第29話
「なーちー君!ついにこの日がきたなぁ...」
「おい啓吾、お前なんだよそのニヤケ顔は...」
「だってさー、今日は前期のテストが返ってくるんだぜ。そりゃニヤケ顔にもなるさ」
テスト返却...そう、今日はついに啓吾の言う通り前期に行われたテストの返却日だった。
きっとこいつは俺の手元に点数の悪いテスト達が返ってくると思ってニヤケているのだろう。
なんて最悪な奴なのだろうか。
しかーし!残念ながら啓吾の思惑通りにはことは進まないだろう。
なぜならあれから俺はみっちり湊に勉強内容を教え込まれたのだ。それはもうスパルタで...思い出すと身震いする。
- あいつ、飴と鞭の使い方が上手かった...何かある度にこの俺にケーキで...
「てかさ、テストの1週間前の期間中、那智に家庭教師もどきついていたんだろ?」
「えっ、あ、あぁ」
湊に勉強を教えてもらっていたとはなんだか悔しくて言いたくなかったので、啓吾には親戚のお兄さんに勉強を見てもらっていると言っていた。
それでまっすぐ学校が終わったらお兄さんの所に行くから一緒に帰れないとも。
「それでその成果はあったのか?」
「んー、まぁ、な。それよりも啓吾こそどうなんだよ」
あまりその話をしているとついポロリと湊のことを言ってしまいそうだったため、俺は軽く話をそらす。
「俺か?俺はいつも通りバッチシ!」
「悪い方に、だろ」
啓吾は本当に勉強をしない。一度何故勉強をしないのかと問いたことがあったのだが、その時啓吾は腰に手を当て
“俺のこだわりだ”と意味のわからない答えを言ってきた。
そんなことを話していると1時限目が始まり、出席番号順にテストが返されていった。
「次、児玉」
ドキドキしながら待っているとついに那智の名前が呼ばれ、早足でもらいに行く。
「お前頑張ったんだな。次もこの調子で頑張りなさい」
もらいに行くと、担当の先生はそう褒めてくれた。すぐに那智は受け取ったテストの点数を視界に入れる。
- っ!87点!
黒板に書いてある平均は60点だ。
その数字を見て那智はガッツポーズをすると自分の後ろの席に座っている啓吾の元へ、ニヤニヤしながら行った。
ともだちにシェアしよう!