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第32話
ファミレスを出た2人はそこでおじゃんにはせず、街の方に出掛けようという話になった。
そのため帰りが遅くなることを予想し、それぞれ服を着替えることにした。
まず最初にすぐ近くにあった那智の家に行き、準備をしてそれから湊の家へと向かう。
バスを降りて少し歩き、那智は久々に湊の家へとやってきた。
...といっても数日ぶりだが。
ガチャリと扉を開け中に入ると、タイミングよく近くの居間の扉が開き、中から湊ママが出てきた。
「おかえり、ってあら、那智君じゃない!遊びに来てくれたのね?ケーキちょうどさっきできたところなのよ、食べていってちょうだい!」
湊ママは那智の存在に気がつくと、何も言う暇を与えない速さでしゃべり、そのままケーキをとりに行ってしまった。
「...ったく、あのババア...じゃあケーキでも食ってから行こうぜ」
湊は呆れたように溜息を吐くと、さっそく戻ってきた湊ママからケーキを2つ受け取った。
「あ、そういえば湊にちょっと話があったのよ」
だから家に入った瞬間出てきたのか。
まぁ、湊のことだから本当に用事がある以外は家にいても部屋とかに籠ってそうだもんな。
「だったら、俺先に部屋に行ってるよ」
「悪いな。あ、俺の分のケーキも食っといていいから」
「やった!」
ケーキを受け取った那智は鼻歌を歌いながら湊の部屋に行った。そして部屋に着くなりケーキを1つ机に置き、イスに座るとパクパクとたいらげていった。
「うまーっ、幸せ」
こう、好きなものを食べている時って、鬱々とした感情を忘れることができていいわ。
今の俺にはとっておきの薬です。
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