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第33話

 「あっ...」  2個目のケーキに手をつけようとした那智はふと、机の引き出しのことを思い出した。  前に引き出しの中を見ようとすると、湊に思い切り止められたのだった。  あれから何度も見ようと思っていたが、この部屋にいるときは必ず湊がいたので、結局は見ることができないでいたのだ。  ―今なら...湊はいない。イケる、これなら確実に...てか、今しかないだろ!  そう考えるなり、すぐさま2個目のケーキに伸ばしていた手を止め、引き出しに向ける。  「中、拝見させていただきまーすっ」  ――ガラ、  「やっぱり、」  引き出しを開けると、数枚の写真が入っていた。写真を全て取り出し、一枚ずつ目を通していく。  その写真は多分、中学の時のものらしく湊はブレザーを着ていた。  中学生の時の湊は何となくだが顔に幼さが残っていて、カッコ可愛かった。  ...あ、でも背は一番高い。  那智の眉間に一瞬深い皺が入った。  ...とりあえずそのことには触れずに全てに目を通していこう。  「あっ...」  何枚か見たところで那智はふと、あることに気がついた。  それは湊と写っているうちの1人の少年。 その少年は、写真の写りにもよるがとても...俺に似ていた。  特に笑顔のこの写真とか、  「他人の空似ってあるんだなぁ、初めて見た。てか、これのどこが拝見禁止なんだよ」  手間取らせやがって...と、そこにはいない湊に向かって一言文句を言うと、写真をもとの位置に置き、引き出しを閉める。  そして、残りのケーキを再び幸せに浸りながら食べ始めた。

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