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第34話
「なぁ、なんか湊機嫌よくない?この短時間でなんかいいことでもあったのか?」
今、2人は街に着き、若者が多くいる歩道を歩いていた。
家を出てから...いや、湊ママの話を聞いて戻ってきたときから妙に湊は機嫌が良い様子だった。
「ん?まぁ、ちょっとな」
那智の問いに湊は曖昧な答えを出すと、今にも鼻歌なんかを歌いながら歩きだすのではないのか、というほどの機嫌のよさでニコニコしながら
混雑とした道を歩いていた。
そのせいか、先程から歩くたびに人がわざわざ振り返ってまでして俺たちの方を見てきていた。
絶対にこいつがニコニコしながら歩いてるからだよなぁ。
普段の湊はどこか大人っぽくて同い年とは思えない雰囲気だが、今の湊はどこか人懐っこい雰囲気が出ている。
「俺の顔になんかついてるか?」
「っ!え、い、いや、ついてないっ」
ジーっと湊の方を見ていると不意に湊がこちらを向きそう言ってきた。慌てて那智は視線を前に向けなんでもないという風に装う。
―うはぁ、あせった。マジ気まずい、
「てか、これからどこ行く?とりあえずゲーセンでも行くか?」
無意味にうろたえていると湊はこれから行く目的地を尋ねてきた。
「あぁ、ゲーセンにしよう!俺、結構こういう系は大得意なんだ!」
「勉強も大得意だといいのにな」
「大きなお世話!」
那智は湊の頭を勢いのまま叩いた。
しかし、湊はそんなことはものともせずに平気面でこれまたニヤニヤとした笑みでこちらを見てきていた。
余裕かましやがってっ!いつもそうだ...いつも余裕な顔しててまるで俺の方が年下みたいな扱い...というか雰囲気になる
「だーっ!もう行くぞ!」
考えるほどに自分が段々とかわいそうな状況になっていることに気がつく。頭の中の思考を振り払うと今の雰囲気をなくすために、大声で話しながらズカズカと大股で道を歩いて行った。
その行動も傍から見ればガキ臭いのだということに那智は全く気がつかなかった。
そしてそんな那智を見てまたバカにしたような笑みを浮かべながら湊が歩いていることにも気がつかなかった。
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