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第35話
それから歩いて数分後、2人はゲーセンの目の前に着いた。
「俺のテクニックさばき見せてやんよ!」
「はいはい」
そんなことを話しながら俺は湊よりも先に自動ドアの向こうへと一歩足を踏み出した。
「っ!あいつ...!」
「...っ?」
それと同時にすぐ後ろにいた湊が何か呟き、那智は何事かと振り向く。
状況がつかめない一瞬のうちに湊は踵を返してどこかへと走り出してしまった。
「え?は!?み、湊っ!?」
意味がわからなかったが、とりあえず湊の後を追うため急いで自動ドアを抜けて外に出た。
「どこに行ったんだ...」
すぐに外に出たつもりたっだが湊の姿はどこにもなかった。
外には知らない人で溢れていてあたりをキョロキョロと窺うが湊は見つからない。
「急に飛び出しやがって...」
本当に急なことだった。
湊はどこか焦っている感じだった。...あの湊が、だ。
前にも一度湊が焦っていたときがあった...それは俺が湊の机の引き出しを開けようとした時。
たしか、あの時も焦っていた。
しかし、今回は前以上に湊は焦っていた。
目を見開き、眉を下げ歯を食いしばり...
湊があんなに焦るなんて...一体一瞬の間に何があったというのだろうか。湊の瞳には何が写っていたのだろう。
そんなことを考えながら湊の行方を捜し近くを歩きまわった。
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