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第36話
「うおっ、」
「じゃ、じゃまだっ、どけどけ!」
湊を探してしばらく。ふらふらと歩いていると店と店の間にあるわき道から急に人が走ってきて
那智は運悪くその男2人と思い切りぶつかってしまった。
その衝撃に軽くよろめき、ぶつかってきた男たちを見ようと顔を上げるがすでにそこに男たちの姿はなかった。
「なんだよ...皆して俺の前からすぐに消えやがって」
だが、先程の男たちの様子はどこかおかしかった。
なんというか...その男たちは“何か”に恐怖し、怯えているように見えた。
まさに、今その対象から逃げてきたかのような...
「何があったんだ...?」
野次馬根性というか好奇心が勝り、一旦湊を探すのを中断し男たちが出てきたわき道へと足を踏み入れていく。
道は大人2人がギリギリ横に並べるくらいの幅で、そこまで狭くもなかった。
歩いて行くと曲がり道が現れた。そして同時に何やら人の声が聞こえた那智は、足を止めて壁からこっそりと覗き見る。
「っ!!」
そこには湊がいた...―――ある1人の存在を抱き寄せ、キスしている状態で...
那智はすぐに見るのを止め壁に凭れかかるとそのままズルズルとしゃがみ込んだ。
―何だったんだ...今の光景は...
湊が誰かを...壊れモノを扱うように優しく抱き寄せて、キスをしていて...
あんな湊、初めて見た。なんだか、見てはいけないような気がした。
何だろう...胸が痛い。
なんでこんなに苦しいんだ...
なんで...涙が出るんだ。
気づけば目からは涙がこぼれていた。
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