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第37話

 「ははっ、何泣いてんだ俺...意味わかんないし」  自分に言い聞かせるようにそう呟く。  だけどなんとなく理由は分かっていた。 でも、その理由を認めたくなくて那智は無かったことにするかのように涙を袖で拭った。  そして立ち上がり、道を抜けて人通りの多い歩道へと戻る。  「はぁー、」  気持ちが落ち着かない。ごちゃごちゃとしていて、何かきっかけがあればすぐにでも泣きそうになってしまう。  ― 少し落ち着こう  ゆっくりと歩道にあるガードレールに腰を下ろす。  さっきの...湊と一緒にいた人物。実はその姿に見覚えがあった。  その人物はつい先ほど湊の家で見た...写真に写っていた男だった。  そう考えると、色々と思いつくことがあった。  棚に入っている写真を隠す時の態度にゲーセンでの動揺、そして路地裏でのこと...  ―ズキ、  湊が感情を素直に出す時、それはすべてあの男が関係していた。  多分、湊が時折俺に見せた切なげな表情も写真の男と俺を見比べて感じた感情が表に出たものなのだろう。  -“あいつならこんなことしないのに”ってか。  そんなにその男は湊にとって大切な存在なのか?  第一男同士なのになんでキスなんかしてんだよ、おかしいだろ...  だが、そう思うものの那智の中の根本的な何かがそれを否定する。  ― 相手が男でも女でも俺は...  「意味...わかんねぇ...っ」  自分は何を考えているんだ。そもそも自分とは別に関係ないじゃないか。  湊が誰とイチャつこうが関係、ない。  「あ...」  その時、俺が出てきた脇道から2人が出てきた。  「みな...と、」  しかし、湊は那智の存在に気がつくこともなくそのままあの男とどこかへと去って行ってしまった。  俺のことなんか頭の中に無いような感じで、さも初めからあの男と2人で一緒にいたかのように。  「うっ...」  また涙が出た。  悲しさ、悔しさ、怒り...全てが混ざり合った涙だった。  止まらない...止めたいのに止まらない...  「なんだよ...なんなんだよ、」  なんでこんな辛いんだ...  涙を流しながら下を向き、その感情に耐えるように歯を食いしばった。

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