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第67話※村澤視点

 「やっと...やっと会えるんだ、」  俺は胸の高鳴りを感じながら真新しい制服に着替えた。  今日はこっちに転校してきて初めての登校日。 昨日の夜はあの人に会えるんだという喜びと期待で中々眠れず、朝は緊張していたせいか早くに目が覚めた。  「俺のこと覚えてるかなぁ...覚えてくれてたら嬉しいな」  高校に入ってあの人は少し大人っぽくなったのかな。いや、きっとすごく格好よくなってるに違いない。  ルンルン気分で鼻歌なんかを歌いながら玄関を出れば眩しい日差しが顔を照らした。  「おはよう、望」  「おはよっ、琉依!」  そして門の前にいた琉依と目が合い、俺はすぐに駆け寄った。  中学の時以来のその光景がひどく懐かしく感じる。  「琉依とこんな風に学校に行くのもなんかすごい久しぶりだよな」  「そうだな。俺はまた望と一緒に学校に行けて嬉しい」  琉依はそういうと、きれいに整った顔を緩ませて見惚れてしまいそうな笑顔を作った。  「本当、何年か会ってないだけで随分とお前はかっこよくなったもんだよなぁ」  羨ましいよ。そう言いながら朝早く人気のない住宅街を歩いていると、急にすぐ隣にいたはずの琉依が道のど真ん中に立ち止まった。  「ん?どうかしたのか」  琉依は顔を俯かせていて、何も反応してこない。 どうしたものか、と不思議に思いながらも傍まで近づくとガシっと腕を掴まれる。  「望...」  「う、えっ、ここでかよっ!?」  慌てている俺を無視して琉依はそのまま俺に顔を近づけてくる。  人気はないとはいえ、ここは住宅街。いつどこでごみ出しをしにきた主婦が現れるかわかったものじゃない。  しかし、その考えと同時に俺は琉依とのあの約束を思い出して抵抗するのをやめ、大人しく目を閉じる。  「...ん、ふ...っ、」  するとそれからすぐに唇に柔らかい感触が重なった。

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