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第70話※
周りの男子生徒はそんな俺の姿を見ておかしそうにケラケラと笑っている。
それなのに恐くて何も抵抗することができない自分自身を恨めしく思い、悔しくて涙が溢れ出てくる。
「あははははっ、こいつ泣いてやんの。こんな初っ端から泣いてたら最後までもたねえんじゃないの」
前田は意地悪そうに笑い、冷たい目で俺のことを見下ろしてくる。
「しょうがない、一気に本番に行っとく?」
前田がそう言うとぞろぞろと男子生徒達は近づいてきて俺の周りを囲み始めた。
―あぁ、リンチか。集団で、
今まで暴力は振るわれていたが集団で一気に振るわれることはなかった。
そのせいか、俺の中の恐怖心も一気に膨れ上がりやめろ、と声を出そうにも出ない。
ただこれから自分がされるであろうことを想像して震えることしかできなかった。
―怖い...怖い怖い...痛いのは嫌だ。殴らないで、蹴らないで...っ、
そしてついに前田の足がゆっくりと地面から上がり、俺の方へと向く。
蹴られる、そう思った俺は目をつぶり腕で顔を覆った。
――ドスッ...!
聞こえたのは人を蹴る音
「...?」
しかしそれは目の前から聞こえてきたもので。
「痛ッてぇ!あ゛ぁ?誰だお前っ」
前田の怒声と周りの男子生徒たちの罵声が聞こえ、俺は不思議に思い閉じていた瞼を開いた。
「あれー、那智じゃなかったんだ」
そこには栗毛色の、短髪の少年が1人前田がいたであろう場所にいた。
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