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第72話※
「村澤...な、よし、覚えた。俺は清水 啓吾、呼び方はお好きに」
「え...?」
まともな返事ができないまま戸惑っている俺に清水君は簡単な自己紹介をするとそのまま俺の隣に座った。
「村澤は今の奴らに刃向かったりしないのか?」
すると先程とは違って優しい声音でそう問いてきた。
「...俺...恐くて何もできないし...それに、友達がいつも助けてくれるから...」
清水君のその雰囲気のおかげか、途中途中止まってはしまうが、なんとか理由をいうことができた。
友達...琉依が助けてくれる。俺は何もしなくても琉依がいてくれれば...俺が何かして傷つく必要はないんだ。
「は?何それ、意味わかんねぇんだけど」
「...?」
清水君の言っている言葉が逆に分からなかった。俺は...何か変なことをいっていただろうか。
「あいつ等のことムカつくんだろ?いじめられて悔しいんだろ?」
「う、うん」
「なら、やり返せよ」
「やり...返す...?俺、が?」
「あぁ、お前が」
清水君はニコリと爽やかな笑顔のままこちらを見てきた。
「そ、そんなの...無理だよ...できない」
前田達に刃向かう...そんなことを想像したら体が震えてきた。
そんなことしたら倍返しと言わんばかりにいじめがエスカレートしてしまう。
「無理じゃねぇよ。やるんだ。どうせ刃向かったことなんてないんだろ?せっかく俺と会ったんだ、いい機会だから軽くケンカのやり方でも教えてやるよ」
「で、でも琉依が助けてくれる、から」
前田達に刃向かうなんてそんなことをしたくない俺は首と手を横に振り、できるだけ否定する。
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