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第73話※
「琉依?そいつが助けてくれるのか?なら、その琉依ってやつのためにもお前はやり返すべきだ」
「そん、な...できないよ」
刃向かえ、やり返せ、清水君は何度もそう俺に言ってくる。
こんなこと、初めて言われた。俺がそんなことをするなんて一度も考えたことがなかった。
「できる!やってもないのにそんなこと言うんじゃねぇッ!そういうのは努力してから言え!」
「...っ、」
清水君のその言葉に涙が出そうになった...というか目に涙の膜が張った。
なぜなら、実際に清水君の言葉に間違いなんてないからだ。正しいことしか言っていない。
事実、俺は助けてもらっているだけで何もしない。
ただ震えているだけ...だから前田達もなにもやり返さない俺を面白がっていじめてくる。
そしてそれを琉依が助ける...悪循環だった。
「俺も手伝うから」
清水君が優しい笑みのまま俺の頭を撫でてきた。
その瞬間、俺の頬を涙が流れた。
「...頑張...る、俺、やり返す...」
「おいおい、泣くなよ」
そんな俺を清水君は困ったように笑い、冗談なんかを言ってきた。
今この時、俺の中の心の霧が消えて澄み切ったような気がした。
「んじゃ、とりあえずはその性格を治すか。いくら喧嘩ができてもそんな性格じゃ今度は陰湿的ないじめをされるからな」
清水君にそう言われ、俺は苦笑するしかなかった。
自分でも自覚はしていたが、やはりこの性格をもう少しどうにかしなければ自分を変えることなどできないだろう。
まぁ、とりあえずは、
「俺、頑張るよ」
涙をぬぐって笑顔をつくった。こんな笑顔をつくったのは小さい頃以来。
「.....あー、似てるなぁ」
「似てる...?」
すると清水君は笑顔の俺を見て、口をポカンと開けて独り言のようにそう言った。
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