4 / 159

第一章・4

「ヴェルフェル様、この標本ですが」 「ようやく美に目覚めたか?」 「何か、足りないと思いませんか?」  足りない、だと? 「古今東西を駆け巡り収集した、私のコレクション。何の不足があろうか!」  投げつけられた白い大皿を受け止め、ピキは声を上げた。 「白! 白い羽がないんですよ、ヴェルフェル様!」 「白……、だと?」  ヴェルフェルは、急いで標本の数々に目をやった。  虹色、深紅、漆黒、空色、翡翠色……。  無い。  確かに、白い羽だけがない! 「うかつだった……」  ふらりと、ヴェルフェルは席を立った。 「ヴェルフェル様、お食事は!?」 「もう、要らぬ……」  ヴェルフェルはそのまま、寝室に入ってしまった。

ともだちにシェアしよう!