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第一章・5
もうすぐだ。
もうすぐで、手が届く。
この腕の中に、抱え込む。
そこで、するりと逃げられる。
「待て! 待ってくれ!」
ヴェルフェルは、自分の発した声で目覚めた。
「白……」
頭の中が、真っ白だ
ついでに、眼の前も真っ白だ。
壁も床も天井も、真っ白な部屋。
まるで、白の間だ。
「そうだ、私は昨夜、あまりにも悔しくて」
コレクションから白い羽が抜け落ちていたことを悔やむあまり、寝室を真っ白にしてから眠りについたのだ。
「しかしダメだな、これでは」
こんな白では、物足りない。
ヴェルフェルは、指をパチンと鳴らした。
途端に寝室は、もとの色彩を取り戻した。
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