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第一章・8
「ご安心ください。そう来るかと思いまして、目星をつけております」
「目星、だと?」
「天使を採集すればヤバいことになるくらいは、私の知恵でも回ります。ですから、天使未満を採集するんですよ」
「天使未満、と言えば、天使候補生か?」
「ご名答」
すでにピックアップ済みです、とピキは耳から水晶玉を取り出した。
手の上で大きくなったそれは、一人の少年を映し出した。
「ほう。これは」
「ヴェルフェル様の、お好みでしょ?」
栗色の癖っ毛に、白い肌。小柄で肉は薄く、聡そうな顔立ち。
「天使候補生・リン。今は人間界で過ごしています」
「人間界で徳を積み、天使に昇格か。相変わらず天界のやることは、古臭いな」
しかしヴェルフェルはすぐに立ち上がると、窓の桟に足を掛けた。
「ピキ、しばらく留守にする。後は頼むぞ」
ヴェルフェル様、との声を遠く後ろに聞きながら、大悪魔は人間界へ飛んだ。
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