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第一章・9

 80円のコッペパンを、もそもそと食べながら、西丘 輪(にしおか りん)は溜息をついた。 (天界では、同じ天使候補生の仲間たちと一緒に、楽しくお昼を食べていたのに)  輪は、天界から遣わされた、天使候補生・リンだ。  名を変え、姿を変え、この高校に入学してきた。  彼の使命は、学校からいじめをなくすこと。  天使長様から認められるよう、早く天使になれるよう、輪は必死でがんばった。  みんなに挨拶をし、声をかけ、悩み相談に乗った。  いじめられている生徒には寄り添い、仲良くした。  ところが、だ。  今度は、いじめられている生徒の友達である、という理由だけで、輪までいじめの連鎖に巻き込まれた。 (僕、なんだか人間不信に陥りそう……)  パンも食べ終えてしまった。  何もしない、何もできない、長い長い昼休みが始まるのだ。  ところがその日の午後、変化が訪れた。

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