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第二章・6
「僕は嫌です。あなたのものになる、なんて」
「まぁ、そう来るだろうな」
仮にも天使になろうという者が、そう易々と悪魔の所有物になるとは言うまい。
しかし、まだ日はある。
「いずれ、私のものにして見せよう。必ず」
不敵に笑うと、比呂士はもとの人間の姿に戻った。
「早くその羽をしまえ。汚れたらどうする」
笑いを含んだ声でそう言うと、比呂士は屋上から降りて行った。
後に残された輪は、降って湧いたこの不吉な状況に震えていた。
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