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第三章・6

「ん! ぅう、うんッ!」 「暴れるな」  比呂士は輪の頬を片手で支え、深く口づけた。  固く閉ざされた輪の唇。  だが、比呂士は片手で易々と彼の顎を開かせた。  閉ざされた唇を、こじ開けた。 「舌を噛むなよ」  そう言って、輪の咥内へ侵入した。 「ぅぐう!」  身を固くして、輪は比呂士の舌を受け入れた。  柔らかく、甘く、そして自在に蠢く比呂士の舌。  嫌悪感は、無かった。  滑らかな粘膜を舐められていると、ぼうっとのぼせた心地になる。 (いけない。候補生とはいえ、天使の僕が。神の遣いである僕が、悪魔に屈服なんかしたら!)

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