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第四章・4

 騙し打ちのように舌を舐められた輪は、比呂士を睨んだ。 「そんな顔をするな。舌はもう痛くないだろう?」 「あ……」  そう言えば。  ひりひりする痛みが、嘘のように消えている! 「早く食べろ。冷めるぞ」 「は、はい」  輪は、パンをちぎって口に運んだ。  比呂士の方をチラ見すると、新聞を広げて野菜ジュースを飲んでいる。  端正な横顔と知的な眼差しを見ていると、昨夜あんなひどいことをした者とは思えない。  とても、悪魔とは思えない。

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